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パーチェスファネルからプロパゲーション・マネジメントへ、時代は変わる

ファネル批判や循環モデル、棚の重要性、メンタル/フィジカル・アベイラビリティはすでに広く語られています。5 co.が置くのは二点だけです。売場から逆順に測ることと、想起の有無で誘導を分ける見込み化の運用定義です。形はフライホイールです。

ブランドオーナーのあいだで長く使われてきたのは、上から下へ狭まるパーチェスファネルです。私は、その形そのものを見直す時期だと考えています。時代は変わる——パーチェスファネルから、プロパゲーション・マネジメントへ、です。

ただし、正直に書きます。「ファネルだけでは足りない」「循環する形がある」「棚が売上を決める」「メンタルとフィジカルのアベイラビリティが成長を支える」——これらは、すでに世界の公開資料で語られてきた主張です。当社のオリジナルとして書きません。

5 co.が本稿で当社の主張として置くのは、次の二点だけです。

  1. 売場から測り始め、購入チャネル → 手に入りやすさ → 誘導 → 見込み化へと、逆の順に測ること
  2. 想起している人としていない人で誘導を分け、見込み化を運用に使える形で定義したこと

「世界で初めて」「唯一」とは言いません。公開Webで同じ順序と分岐を明示した資料が見当たらなかった、という調査結果は、末尾の出典に1行で記します。

ロジャーズの普及理論との向きの違いは別稿にまとめました。オンターゲット率とConsidex、および unBoxed 2026 のネスレ事例の数字は、別稿に譲ります。ここでは数字を繰り返しません。

なお、本稿の「プロパゲーション(Propagation)」は、ウイルス拡散や感染モデルの propagation とは区別します。ここで言うのは、売上の構造を売場から外へ広げる測定と運用の枠組みです。チャネルをまたいで見込み化・誘導・売場を動かすサービス名は、Propagation Management Dashboard です。

すでに言われていること

ファネルだけでは足りない/循環する形

McKinseyは2009年、タッチポイントを長くファネルの比喩で理解してきたとしたうえで、次のように書いています。「But today, the funnel concept fails to capture all the touch points…」「Actually, the decision-making process is a more circular journey…」(Court et al., The consumer decision journey, 2009)。

HubSpotは、ファネルの欠点を「it views customers as an afterthought, not a driving force」と述べ、代替としてフライホイールを置いています(The Flywheel Model)。

Googleは、購入のあいだに「messy middle」があり、exploration と evaluation の二つのモードを人はループすると整理しています(Rennie & Protheroe, 2020)。「People loop through these twin modes of exploration and evaluation…」

Gartnerは、B2Bについて「The B2B buyer’s journey is not a linear process」とし、買い手が段階を並行して行き来すると述べています(2019)。

日本でも、電通の内藤敦之氏がDECAX(Discovery→Engage→Check→Action→eXperience)を提唱し、AIDMA/AISASに続く段階モデルの更新が続いています(CNET Japan, 2015)。国内でファネルに代わるモデルの一例です。

これらは、いずれも線形ファネルへの見直しや循環・非線形の話です。当社が後追いで「ファネルは死んだ」と宣言するための材料ではありません。すでに共有されている地ならしです。

棚が売上を決める

リテール/コマースメディアの議論では、広告が需要を増幅しても、成長の実現点は棚にある、という整理が公開されています。AdExchanger(DoorDash寄稿, 2026)は、「advertising amplifies demand and content drives conversion – but growth is delivered on the shelf」と書いています。

Amazon Adsのフルファネル解説も、「We always recommend starting with the bottom of the funnel and working your way upward when building a full-funnel strategy」とし、宣伝の前に商品詳細ページを整える例を挙げています(What is full-funnel marketing?)。公開のBrand Metricsまわりでは、段階は Awareness・Consideration・Purchase と書かれます(Encounterではありません)。

ここまでも、棚・売場を軽視するなという先行の声です。当社だけが棚を見つけた、とは書きません。

メンタルとフィジカルのアベイラビリティ

バイロン・シャープは、「In the long run, the competition for sales is one of mental and physical availability」と述べます(Branding Strategy Insider転載, 2023)。メンタルアベイラビリティ(購買の場面で思い出されやすいこと)とフィジカルアベイラビリティ(見つけやすく買いやすいこと)を、広く伸ばすのが成長則だ、という枠組みです。

当社の短い言葉では、前者は「想起」、後者は「売場」に近いです。この対そのものは、Ehrenberg-Bass/シャープの公開議論に属します。 当社の発明ではありません。

当社の主張(1):売場から、逆の順に測る

先行の多くは、「下から組む」「棚を見る」「循環で見る」までを語ります。5 co.が足すのは、測定の順序を、次のスタックとして明示することです。

  1. 売場(総売上)
  2. 購入チャネル
  3. デジタルと物理の手に入りやすさ(アベイラビリティ)
  4. 売場へ誘導するタッチポイント
  5. 見込み化のメンタルなタッチポイント

業務の短い言い方では、見込み化 → 誘導 → 売場です。施策の会話は上からでも構いません。測り始める位置は売場です。上から絞る漏斗のKPIを、そのまま逆さにしただけ、でもありません。チャネルと手に入りやすさを、誘導と見込み化の手前に置き、売場の制約を先に切り分けるための順です。

これを、5 co.はプロパゲーション(Propagation)と呼びます。Amazon Adsの公開資料がフルファネルを Awareness・Consideration・Purchase で語るのに対し、当社の順は売場起点の測定スタックです。

図1|測定の順(木のたとえ)

5. 見込み化(樹冠の外側)
        ▲
4. 誘導(葉)
        ▲
3. 手に入りやすさ(細枝)
        ▲
2. 購入チャネル(枝)
        ▲
1. 売場・総売上(幹=起点)

キャプション: 測る順番は、売場を幹とする木のたとえで示します。
出典: 5 co.の業務枠組み。
注: 効果を保証する図ではありません。

たとえとして、総売上を幹、購入チャネルを枝、手に入りやすさを細枝、誘導を葉、メンタルな接点を樹冠の外側、と並べます。ロジャーズの「広がる」向きと揃えつつ、測っているのはイノベーションの採用心理ではなく、売上の構造です(ロジャーズの記事)。

当社の主張(2):想起の有無で誘導を分け、見込み化を定義する

シャープの枠組みでは、メンタルとフィジカルの両方を、より多くの人・より多くの購買場面で伸ばすことが成長則です。当社はそれを否定しません。売場から測ると、誘導の役割の見え方が変わります。 シャープの二本柱を補うために、運用上の分岐を置きます。

  • すでに想起できている人は、自分で検索して売場に来ることがあります。その人には、あらためて誘導は要りません。
  • まだ想起していない見込み顧客には、オフサイトから売場へつなぐ誘導が要ります。

ここでいう見込み顧客は、商品を知っていて、理解していて、買う気がある人です(特許公報の定義に沿う。第7344770号など)。想起を、見込み化と言い換え、誘導の対象を「まだ想起していない見込み顧客」に限る——この運用上の切り分けが、シャープの二本柱だけでは名前が付かない段です。ミドルでオフサイトから売場へ運ぶ実務を、残すための定義です。

Googleのmessy middleは、探索と評価のループを示します。当社の分岐は、そのループの外側で「自分で売場に来るか/誘導が要るか」を分ける話です。同じ「検討」でも、問いが違います。

形はフライホイール——見込み化・誘導・売場・普及

漏斗に代わる形は、フライホイールにします。一周する要素は、次の四つです。

  1. 見込み化 — 買う気のある人を増やす・確かめる
  2. 誘導 — まだ想起していない見込み顧客を売場へつなぐ
  3. 売場 — 見つけやすさ・買いやすさと、そこでの売上
  4. 普及 — 売場での経験や接点が、次の見込み化へ広がる

図2|プロパゲーションのフライホイール

見込み化 誘導 売場 (測りの起点) 普及
キャプション: つながり方はフライホイール。一周のどこから話してもよいが、測り始める位置は売場です。
出典: 5 co.の業務枠組み。HubSpotのフライホイール(顧客を駆動力とする循環)を参照しつつ、要素と起点は当社定義。
注: 効果を保証する図ではありません。

HubSpotのフライホイールは、顧客を後回しにしない循環として知られています。当社との違いは、はっきりしています。売場を起点に測ることです。HubSpotが顧客体験の循環を置くのに対し、プロパゲーションは売上構造の循環を、売場から読みます。

役割分担だけ整理します。測る順番は木(図1)、つながり方はフライホイール(図2)です。木は「どこから測るか」、フライホイールは「四つの要素がどう一周するか」です。食い違いではありません。

特許に書かれていることまで

プロパゲーションのうち、特許に触れる部分は、特許第7344770号および第7397520号の公報の範囲に限ります(特許権者:株式会社5、発明者:若松武志)。詳細は特許のページにあります。

段公報での根拠
見込み化見込み顧客の定義と、見込み顧客数データと配信結果の相関(請求項1、【0047】【0055】など)
誘導広告ページ誘導率を含む配信結果との相関(請求項1、【0038】【0039】【0060】【0061】)
売場側の接触広告対象物が掲載されたコンテンツの閲覧(【0039】)、購入・購入メディア等の設問例(【0045】)まで

公報の外にある改良は、ここでは書きません。見込み顧客の人数を推計する調査がConsidexです。チャネルをまたいで三段を動かすのが、Propagation Management Dashboard です。

unBoxed 2026の図は、短く(数字は別稿)

Amazon Ads unBoxed 2026 Tokyo では、ネスレ日本のピュリナ ワンがオンターゲット率を問う登壇をしました。登壇スライドには、遭遇(Encounter)→ 検討(Consider)→ 購買(Purchase) の図がありました。これは登壇資料の表記です。Amazonの公開資料でよく見る Awareness・Consideration・Purchase とは、語が違います。書き分けます。

登壇の数字はオンターゲット率とConsidexの別稿に任せます。ここでの対比は向きだけです。登壇の図が上から下へ進むのに対し、プロパゲーションは売場から外へ測り、フライホイールで一周します。同じ「買う」でも、起点が違います。登壇の数字は過去の1事例であり、効果を保証するものではありません。

ブランドオーナーへの含意

目的が「届けたい属性に届いたか」なら、オンターゲット率が先に立ちます。目的が「買う気のある人は何人か」「その人を売場へつなげたか」なら、売場から逆順に測り、想起の有無で誘導を分ける必要があります。

私は、後者——プロパゲーション・マネジメント——へ、時代が移ると見ています。ファネルを捨てる、という意味ではありません。すでに共有されてきた見直しの先に、測定の逆順と誘導の分岐を、運用の言葉として置く、という主張です。

参考文献

5 co. 代表取締役CEO 若松武志

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