コンバージョン率が十分なら、次に伸ばすのは来店数だ
コンバージョン率がすでに十分な局面では、さらにコンバージョン率を追っても全体は伸びにくい。5 co.は、売場に来る人を増やす側へ指標と予算を移します。プロパゲーションの「誘導 → 売場」とも同じ向きです。
ブランドオーナーのECを見ていると、コンバージョン率(来た人が買う割合)をどこまでも上げようとする場面に出会います。コンバージョン率がすでに十分な水準にあるとき、私はそこから先を狙うのを止めます。次に伸ばすのは、売場に来る人——来店数(アクセス量)のほうです。
コンバージョン率が十分なとき、さらに追っても全体は伸びない
ある案件のレビューで、サイト全体のコンバージョン率はすでに十分な高さにありました。担当者は、そこからさらにコンバージョン率を上げる方向で考えていました。私は止めました。コンバージョン率がある水準を超えたら、そこから先を狙っても、全体の売上は伸びにくい、という判断です。
数字の具体値や案件名は出しません。言いたいのは一般の構造です。売上が「来た人の数 × 買った人の割合」でできているとき、割合がすでに高い局面では、割合をさらに伸ばす余地より、人数を増やす余地のほうが大きいことが多い、ということです。
入ってきた客に必ず買わせる店と、来店数を増やす施設
たとえで言うと、こうです。
かつての家具店のなかには、店に入ってきた人を必ず買わせようとする店がありました。入口で署名を求め、一度入ったら簡単には出られない、というやり方です。一方、商業施設は、来た人全員に住所や署名を求めたりしません。代わりに、とにかく来店数そのものを増やします。
ECでも同じ向きの判断が要ります。コンバージョン率が十分な局面では、入ってきた人をさらに追い込むより、売場に来る人を増やす。そのために、クリック単価を下げる方向へ切り替えることもあります。Key Resultsも、コンバージョン率からアクセス側へ置き直します。
プロパゲーションの「誘導 → 売場」と同じ向き
当社がプロパゲーション(Propagation)と呼ぶ枠組みでは、売場を起点に測り、見込み化・誘導・売場を並べます(パーチェスファネルからプロパゲーション・マネジメントへ)。売場で買いやすさが足りないうちに上だけを伸ばしても、全体は動きません。逆に、売場の転換がすでに十分なときは、さらに売場の中だけを絞るより、売場へ来る人を増やす——誘導の側——へ力を移す、という話になります。
漏斗は上から下へ狭まり、普及は広がります(ロジャーズの記事)。コンバージョン率が十分なあとに来店数を伸ばす判断は、「狭める」側ではなく、「売場へ届く人数を広げる」側です。矛盾しません。
Amazon Adsのフルファネル解説も、下から組むこと——詳細ページを整えてから上へ進むこと——を勧めています(What is full-funnel marketing?)。本稿の話は、その先の局面です。下(売場の転換)が十分なとき、次は人数です。
図1|コンバージョン率が十分なあとに動かす変数
コンバージョン率がまだ低い コンバージョン率が十分な局面
│ │
▼ ▼
売場の買いやすさ・ 来店数(アクセス)
転換を整える を伸ばす
│ │
▼ ▼
(必要なら誘導も) 誘導・接点の効率
(例:クリック単価)
キャプション: コンバージョン率が十分な局面では、さらにコンバージョン率を追うより、売場に来る人数側へ指標と予算を移す。
出典: 5 co.による点検用の概念整理。
注: 効果を保証する図ではありません。コンバージョン率の「十分」の閾値は案件ごとに異なり、本稿では具体値を示しません。
ブランドオーナーへの含意
コンバージョン率を見るな、という意味ではありません。低いときは、売場を整えるのが先です。十分になったら、同じ指標を延々と追わず、来店数側へKey Resultsと予算を移す。限られた予算で目標に届くための、順番の話です。
参考文献
- Amazon Ads. What is full-funnel marketing? https://advertising.amazon.com/blog/what-is-full-funnel-marketing
- 5 co. Insights「パーチェスファネルからプロパゲーション・マネジメントへ、時代は変わる」https://5co.ltd/insights/purchase-funnel-to-propagation/
- 5 co. Insights「漏斗は狭まり、普及は広がる——ロジャーズの普及理論と、5 co.のプロパゲーション」https://5co.ltd/insights/rogers-diffusion-and-propagation/
5 co. 代表取締役CEO 若松武志
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