戦略とは「何をやらないか」を決めることだ
指標を注力領域とそれ以外に分け、注力領域以外には投資しない。5 co.では、それを戦略と呼んでいます。限られた予算で目標に届く道筋は、やらないことを決めるところから始まります。
ある案件で、指標が売上全体の一本だけで置かれていました。私は、指標に枝を1本足して、注力領域とそれ以外に分けるよう指示しました。注力領域で勝てば全体が勝てる構造だからです。注力領域以外には投資しない、という判断まで、セットで決めます。
これが、当社で言う戦略です。何をやるかより先に、何をやらないかを決めること。
指標を一本にすると、全部が同じ重さになる
売上全体だけを見ていると、どの枝に予算を置くかも、全部が同じ重さに見えます。結果として、広く薄く投資し、注力領域が足りなくなる。限られた予算では、届くはずの目標にも届きません。
枝を1本足す、というのは、派手な話ではありません。注力領域とそれ以外を、指標の上で見えるようにするだけです。見えるようになった瞬間、「それ以外」に投資しない、という選択が可能になります。
カテゴリー名も、ブランド名も、数値も出しません。構造だけを書きます。
注力領域だけで戦う
私はよく、こう言います。その重要なところだけで戦うのが戦略です。何をやらないかを判断する。
マイケル・ポーターも、「The essence of strategy is choosing what not to do」(戦略の本質は、何をやらないかを選ぶことにある)と書いています(Porter, What Is Strategy?, Harvard Business Review, 1996)。トレードオフがなければ、選択も戦略も要らない、という議論です。当社の現場の言い方は、指標の枝分けと投資の可否に落としたものです。ポーターの競争戦略そのものを、そのまま写しているわけではありません。
図1|指標の枝分けと、やらないことの決定
売上全体(一本だけ)
│
│ 枝を1本足す
▼
┌────────────┐
│ 注力領域 │ ← ここに投資する
└────────────┘
┌────────────┐
│ それ以外 │ ← 投資しない
└────────────┘
キャプション: 注力領域で勝てば全体が勝てるとき、それ以外に投資しないと決める。
出典: 5 co.による点検用の概念整理。
注: 効果を保証する図ではありません。注力領域の定義は案件ごとに異なり、本稿では具体名を示しません。
月が替わる前に、次の月の目標を置く
枝分けとあわせて、もう一つ求めます。月が替わる前に、次の月の目標値を置き、ブランドオーナーと同じ目線で合意することです。
やらないことを決めても、次の月の着地が共有されていなければ、現場はまた広く薄く動きます。目標を先に握ることで、「注力領域以外はやらない」が、その月の運用に落ちます。
似ていて、違う話
目標への影響が小さいリスクに時間を割かない、という話(別稿のテーマ)とは、論点が違います。あちらは点検のあとで時間をどこへ回すかです。本稿は、指標と投資の設計そのもので、戦場を狭める話です。
採用の話でもありません。入社前後に「やること・やらないこと」を開示する記事とは、読者と目的が違います。
ブランドオーナーへの含意
全部に手を出すのが誠実だ、と感じる場面はあります。ただ、予算が有限である以上、全部に手を出すことは、注力領域を薄くすることと同じです。指標に枝を足し、それ以外に投資しないと決める。それが、目標に届く道筋になります。
参考文献
- Porter, M. E. (1996). What is strategy? Harvard Business Review, 74(6), 61–78. https://hbr.org/1996/11/what-is-strategy
- Harvard Business School, Institute for Strategy and Competitiveness. Strategy explained. https://www.isc.hbs.edu/strategy/Pages/strategy-explained.aspx (「Strategy requires you to make trade-offs in competing – choosing what not to do.」)
5 co. 代表取締役CEO 若松武志
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