Insights Strategy

ブランド別の目標は、自社内の食い合いを生む——カテゴリー単位でOKRを立てる

ブランドごとに「来期はシェアを大きく伸ばす」と目標を立てると、足し合わせたときに同じお客様を自社同士で奪い合う計画になります。計画の出発点をカテゴリーに置き、自社全体で取れるシェアを先に決めてからブランドに役割を配る。その考えを代表として書きます。

年間計画の季節に、こんな会議をしたことはありませんか

来期の年間計画を立てる時期になると、ブランドごとの担当者が、それぞれの目標を持ち寄ります。どのブランドの資料にも「来期はカテゴリーでのシェアを大きく伸ばします」と書かれていて、どれも筋が通っています。

ところが、その数字を同じ表に並べてみると、おかしなことが起きます。同じカテゴリーにある自社のブランドが、どれも大きなシェアを取る前提になっている。足し合わせると、自社だけでカテゴリーのかなりの部分を取る計算です。誰も無理な目標を立てたつもりはないのに、計画全体としては実現できない形になっているのです。

広告の現場でも、同じことが小さく起きています。自社の2つの商品群が同じキーワードに入札していて、検索結果の掲載枠を自社同士で取り合っている。クリック単価(CPC)を押し上げている相手が、実は自社だった、ということがあります。

私は、こうしたずれの多くは担当者の力量ではなく、計画の単位がブランドになっていることから生まれると考えています。この記事は、私たちの社内で最近あったやりとりをもとに、その考えを代表として書いたものです。

ある会議で、私が伝えたこと

先日、社内の定例会議で、あるクライアントの来期の年間計画が話題になりました。そのクライアントは、同じカテゴリーに複数のブランドを持っています。

私が伝えたのは、来期の計画はブランドごとではなく、カテゴリーのシェアを起点に立てたいということでした。ブランドごとにシェアの目標を立てれば、同じお客様を取り合う以上、必ずどこかで自社の商品どうしが食い合います(カニバリゼーション)。そうではなく、まずカテゴリーの中で自社全体として実現できるシェアを決め、そのうえで各ブランドがどの部分を担うかを決める。順番を逆にしたいのです。

今回は例年より早く着手し、カテゴリーのシェアを起点にした計画を先に作ることを、その場で決めました。

当社ではすでに、重要なカテゴリーごとに、目標と、今との差(ギャップ)を置く計画を「カテゴリーOKR」と呼び、全チームで呼び方を揃えています。OKR(目標と主要な結果)は、目指す目標と、その達成を測る数値をひと組で置く目標の立て方です。カテゴリーの中で特に重要なブランドがあれば、それを切り出して単体の目標も作ります。ただし、その目標はあくまでカテゴリーOKRから下ろしたものです。

カテゴリーOKRは、外側から内側へ決める

カテゴリーの規模お客様が見比べる範囲で切る自社全体のシェア実現できるシェアを先に決めるブランドの役割価格帯と訴求で受け持ちを分ける広告と商品の施策自社同士の入札の重なりを解く
カテゴリーの規模お客様が見比べる範囲で切る自社全体のシェア実現できるシェアを先に決めるブランドの役割価格帯と訴求で受け持ちを分ける広告と商品の施策自社同士の入札の重なりを解く
ブランドの目標を足し上げるのではなく、カテゴリーで取れるシェアから配る。

カテゴリーから始めると、何が変わるか

計画の出発点をカテゴリーに置くと、少なくとも3つのことが変わります。

  1. 目標の高さに、外の物差しができる — ブランド別の目標は、昨年の実績に何割上乗せするか、という内向きの議論になりがちです。カテゴリーの規模と、そこで取れるシェアから考えると、目標が高すぎるのか低すぎるのかを、市場という外の物差しで確かめられます。
  2. ブランドの役割が分かれる — 同じカテゴリーでも、価格帯や訴求で受け持つお客様を分けられます。新しい上位ラインを出すときに、既存の商品とお客様を奪い合わないかを、価格帯と訴求の違いで先に整理しておく。これはブランド別の計画では後回しになりやすい作業です。
  3. 広告の取り合いが見える — カテゴリー単位で広告を見ると、自社の商品同士が同じキーワードで入札し合っている箇所が見つかります。私たちが実際に調整したときは、売上の規模が大きい商品を優先しつつ、単価の高い商品にも掲載の機会が残るように入札を組み直しました。

どれも、計画をブランドごとに閉じているあいだは見えにくいことです。

ブランド別の目標にも、理がある

公平のために書いておくと、ブランドごとに目標を持つことにも、はっきりした理由があります。

  • 責任の所在がはっきりする — ブランドごとに担当者がいる組織では、ブランド別の目標がいちばん分かりやすい責任の分け方です。
  • ブランドの個性を守れる — カテゴリーで一括りにすると、ブランドごとの世界観やお客様との約束が数字の陰に隠れてしまう心配があります。
  • 組織や評価の仕組みと合っている — 社内の予算や評価がブランド単位で組まれているなら、計画だけをカテゴリー単位にしても、現場は動きにくいでしょう。

私も、ブランドごとの責任や個性をなくすべきだとは考えていません。変えたいのは、目標の出発点です。カテゴリーで自社全体として取れるシェアを先に決め、それをブランドに配る。ブランドの担当者は、その配分の中で自分のブランドの役割を果たす。責任の単位はブランドのまま残し、計画の単位をカテゴリーにする、という考え方です。

もう一つ、注意していることがあります。カテゴリーを広く取りすぎると、目標がぼやけて施策が決まりません。だから私たちは、お客様が実際に見比べている範囲をカテゴリーとして切り、勝負するカテゴリーを絞ってから目標を置いています。

「うちもそうだ」と思った方へ

ブランドごとの計画は、それぞれは正しいのに、合わせると実現できない。年間計画の会議でそう感じたことがあるなら、計画の出発点を一段上げて、カテゴリーから見直す価値があると思います。

カテゴリーの中で自社がどのくらいのシェアを取れるのか、ブランドごとの役割をどう分けるのか。ご相談はお問い合わせからお寄せください。市場が伸びているのに自社だけ伸びないときの考え方は、市場は伸びているのに、なぜ自社だけ伸びないのかにまとめています。

本記事について: 事例は当社の社内会議の記録をもとに、クライアント名・ブランド名・業種・金額を伏せて再構成しています。

5 co. 代表取締役CEO 若松武志

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