単月で見ると、広告がオーガニックの売上を奪っているように見える——評価期間の設計
広告費を増やした翌月、広告経由の売上は増えたのにオーガニックの売上が減っている。そのグラフだけを見れば、広告がオーガニックを食っているように見えます。本当に食っている場合と、効果がまだ時間差で表れていない場合を見分けるには、評価の期間と判定の時期を先に決めることが欠かせません。その考えを代表として書きます。
増額した翌月の報告会で、起きること
広告費を増やした翌月の報告会。広告経由の売上はしっかり増えています。ところが、その横に並んだオーガニック(広告を経由しない、通常の検索結果などからの購入)の売上は、前の月より少し減っている。グラフを見た上司やクライアントの担当者から、こう聞かれます。
「これ、広告がオーガニックを食っているだけじゃないの?」
担当者は「中長期では効いてくるはずです」と答えますが、それを示す材料は資料のどこにもありません。結局、増額は翌月から元に戻されることになる。同じような場面に立ち会ったことのある方は多いと思います。
私は、ここに二つの別々の問題が混ざっていると考えています。一つは、広告が本当にオーガニックを食っている場合。もう一つは、広告の効果が時間差で表れるのに、評価の期間が短すぎる場合です。この記事は、私たちの社内で最近あったやりとりをもとに、その見分け方を代表として書いたものです。
ある会議で、私が伝えたこと
先日、社内の定例会議で、あるチームが広告費の増額の効果をまとめた資料を報告しました。そこにあったのは、増額した月の単月のグラフでした。
私が伝えたのは、このグラフだけを見ると、広告がオーガニックを食っている説明図に見えてしまうということです。そのうえで、年度末までの推移の見込みを、別のページではなく同じグラフの延長線上に置いてほしいと頼みました。増額した月から先、広告で初めて買ったお客様が、数か月後に広告を経由せずに買い直しているか。それを1枚で見せなければ、読み手は単月の印象で判断してしまいます。
担当者からは、増額直後の期間は広告経由のブランド新規顧客(過去一定期間にそのブランドを買っていないお客様)の数を主に見て、数か月後に、そのお客様がオーガニックの売上に流れ込んでいるかで判定する、という案が出ました。私もそれに賛成し、判定する時期を資料に書き込むことにしました。
増額の効果は、期間を決めて判定する
本当に食っている場合も、ある
ただし、私は「長い目で見れば広告は効く」と言いたいわけではありません。広告が本当にオーガニックを食っていることも、実際にあります。
別のブランドでは、広告費を増やすにつれて広告経由の売上が増え、オーガニックの売上が減り、ブランド新規顧客の割合も下がっていました。これは時間差ではありません。もともと広告がなくても買ってくれていた既存のお客様に、広告を見せていただけです。
このとき私は、オーガニック売上の目標をはっきり置き、ブランド新規顧客の割合を上げる配信に組み直すよう求めました。広告経由の売上を伸ばすことだけを最適化すると、予算はいずれ既存のお客様に寄っていき、広告の成果は伸びて見えるのに全体は増えない、というよくある落とし穴に落ちるからです。
二つの場合を見分ける手がかりは、ブランド新規顧客が増えているかどうかです。新しいお客様が増えているなら、効果はまだ時間差の途中かもしれません。増えていないなら、評価の期間を延ばしても結論は変わらないでしょう。
「長い目で見れば」は言い訳になる、という見方にも理がある
公平のために書いておくと、評価の期間を長く取ることには、もっともな懸念があります。
- 判断が先送りになる — 「半年後には効いてくる」と言い続ければ、どんな施策も止められなくなります。
- その間の費用は確実に出ていく — 効果は見込みでも、広告費は毎月確実に使われます。
- 施策ごとに都合のよい期間を選べてしまう — 結果が出る期間を後から選べば、どの施策も成功に見せられます。
私も、この懸念はもっともだと思います。だから私たちは、評価の期間を延ばすときに、次の3つを必ず決めています。
- 判定の時期は、始める前に決める — 結果を見てから期間を選ぶのではなく、資料に判定の時期を書いておく。その時期が来たら、延ばさずに判定します。
- 途中の物差しを置く — 判定までの間は、ブランド新規顧客の数や割合のように、早く動く物差しで進み具合を確かめます。途中で物差しが動かなければ、判定を待たずに見直します。
- 施策ごとに物差しと期間を分ける — すぐに売上につながる広告と、時間をかけて効いてくる施策を、同じ物差しと同じ期間で測りません。育つ前の施策を止めないためにも、育たない施策を続けないためにも、最初に分けておきます。
評価の期間を設計することは、効果を甘く見るためではなく、正しい投資を止めず、効かない投資を続けないためのものです。
「うちもそうだ」と思った方へ
広告費を増やしたのに、単月の数字だけで「食っている」と判断されて元に戻した。あるいは逆に、効いていない広告を「長い目で見れば」と続けてしまった。どちらの経験も、評価の期間と判定の時期を先に決めることで、防げることが多いと考えています。
広告の効果をどの期間で、どの物差しで判定するかは、お問い合わせからご相談ください。
本記事について: 事例は当社の社内会議の記録をもとに、クライアント名・ブランド名・業種・金額を伏せて再構成しています。
5 co. 代表取締役CEO 若松武志
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