「このスライド、いらないよね」と言う前に——チームとクライアントを同じゴールに向かせる資料
打ち手から始まる資料は、作った本人にしか読めません。目標・このままの予測・ギャップ・打ち手を1枚でつなぎ、背景と共通の問題を先に書く。人を巻き込む資料を作る力を、当社では仕事の中心のスキルとして育てています。
今の職場で、こんな資料にうんざりしたことはありませんか
1ページ目から施策の一覧が始まる。広告の配分、商品詳細ページの改善案、セール前後の打ち手が何十ページも続く。読み終えた上司やお客様から出てくるのは、決まって「で、結局これは何のためにやるんだっけ」という質問です。説明を求められた担当者が口頭で補い、会議はそこで時間切れになる。
逆の場面もあります。背景や前提を説明するページに来たとたん、「このスライド、いらないよね」と飛ばされる。削られた資料は短くなりますが、なぜその打ち手なのかを知っているのは作った本人だけになり、資料は社内でもお客様の社内でも、誰にも転送できないものになります。
どちらの場面も、資料が多すぎる・少なすぎるという問題に見えます。私は、どちらも資料がゴールにつながっていないという同じ問題だと考えています。この記事は、私たちの社内で最近あったやりとりをもとに、その考えを代表として書いたものです。
ある会議で、私が伝えたこと
先日、社内の定例会議で、ある担当者が年末の大型セールに向けたクライアント向け資料を共有しました。過去のセールの前後で売上がどう動いたかの分析は丁寧で、そこから翌月以降の広告費の配分まで、打ち手は具体的に書かれていました。
ただ、その資料は打ち手から始まっていました。セールの売上目標は担当者の中では決まっていて、私が尋ねると「はい、あります」と即答でした。それでも資料のどこにも、目標がいくらで、今のペースだとどこに着地し、その差をどの打ち手で埋めるのかが書かれていませんでした。
そこで私は、2つのページを必ず入れてほしいと伝えました。
- ゴールとギャップの接続ページ — 目標、このままの予測、その差であるギャップ、ギャップを埋める打ち手。この4つを1枚でつなぐページです。「このままいくとこうなる、だからこれをやる、そうすると目標に届く」という文脈を、口頭ではなく資料に書きます。
- 背景と共通の問題のページ — こんな背景があり、こんな共通の問題があり、それをみんなで解決しましょう、という動機のページです。
担当者はその場で「明日までに準備します」と答え、作業はその日のうちに始まりました。それ以来、この2つのページは、当社がクライアントに出す資料の決まりになっています。
資料に必ず入れる、ゴールとギャップの接続ページ
1枚の紙で、合意を作った経験
この決まりには、私自身の経験があります。
あるブランドの支援を始めたとき、そのブランドの月の売上は、今の数分の一でした。最初に先方の経営者にお渡ししたのは、何十ページもの提案書ではなく、1枚の紙です。そこには、現状からはかなり遠い、強烈に高い目標と、現状とのギャップ、そしてそれをどう埋めるかだけを書きました。
その紙を前にした議論は、「それはやりたいね」と「本当にできるのか」の往復でした。その往復を経て合意ができ、目標が先方と私たちの共通認識になりました。そこから先は、私たちが説得して動いてもらうのではなく、先方が自分たちで動き出しました。カテゴリーの中でどこまで伸ばすか、商品詳細ページのコンバージョン率をどこまで上げるか、という具体的な議論も、同じゴールを見ているからこそ、短い時間で決まるようになりました。
数字を見せることは、相手を追い詰めるためではありません。同じゴールを見る人を増やすためです。
「いらない」と言う人の言い分にも、理がある
公平のために書いておくと、「このスライド、いらないよね」と言う人の言い分にも理があります。
- 会議の時間は限られている — 背景の説明に会議の大半を使い、肝心の打ち手を決める時間がなくなる会議は、確かに失敗です。
- 中身のない前置きは本当に無駄 — 「市場環境」と題して誰でも知っている一般論を並べたページは、削ったほうが資料は良くなります。
- 結論から話せ、は正しい — 読み手の時間を奪わないことは、資料を作る側の礼儀です。
私も、誰も必要としないページは削るべきだと考えています。問題は、何を基準に「いらない」と判断するかです。
私の基準は、そのページがゴールにつながっているかどうかです。打ち手のページでも、ゴールとのつながりが書かれていなければ、読み手にとっては「いらないページ」です。背景のページでも、共通の問題を示して打ち手の理由になっていれば、それは資料の中で最も大事なページです。
背景や動機のページを削りたくなるのは、多くの場合、資料を「自分がやることの説明書」として作っているときです。自分ひとりで実行して結果を出す仕事なら、それで足ります。しかし私たちの仕事は、チームの同僚とも、クライアントの担当者とも、その先にいるクライアントの上長とも、一緒に結果を出す仕事です。自分だけ結果を出せばいい働き方では、この仕事は前に進みません。
当社で伸ばすのは、人を同じゴールに向かせる力
当社で育てたいのは、分析の速さや施策の数だけではありません。チームとクライアントを、資料1枚で同じゴールに向かせる力です。
具体的には、次のような行動ができるかどうかを、私たちは日々の会議で確かめています。
- 資料の冒頭で、目標・このままの予測・ギャップを数字で示している
- 各ページの最後に、「この問題に対する打ち手は次のページ」と、次につながる1行がある
- 作った本人が口頭で補わなくても、上長やクライアントの担当者が読んで「で、何をするか」までわかる
- 背景と共通の問題のページがあり、なぜみんなでやるのかが書かれている
どれも才能ではなく、繰り返せば身につく型です。最初からできる人はほとんどいません。だから私たちは、会議のたびに資料を開き、できていれば「できている」と伝え、抜けていればその場で何を足すかを決めています。
「自分もそうだ」と思った人へ
ここまで読んで、「施策だけ並んだ資料にうんざりしていた」「背景のページを飛ばされて、説明し直す羽目になった」と、自分の職場の場面を思い出した人もいると思います。その違和感は、あなたがチームやお客様と同じゴールを見ようとしている証拠です。当社は、その違和感を仕事の型に変えていく会社です。
反対に、自分の担当範囲で結果を出すことだけに集中したい人には、当社は合わないかもしれません。その理由は、この会社に向かない人——入社前に知ってほしい5つのことに正直に書いています。
働き方と制度の詳細は採用情報をご覧ください。迷う点があれば、お問い合わせからカジュアルにご質問ください。
本記事について: 事例は当社の社内会議の記録をもとに、クライアント名・業種・金額・社員名を伏せて再構成しています。
株式会社5 代表取締役CEO 若松 武志
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